屋根の塗装はローラーなどで行いますが、その過程で、屋根材(スレート)の重なり部分で塗料が硬化し、塗料の膜(塗膜)が屋根材の隙間を塞いでしまうことがあります。 「縁切り(えんきり)」は、この隙間部分の塗膜を除去し、水の通り道を確保する作業です。「縁切り」を適切に行わないと、屋根材の内部に雨水などが浸入し、雨漏りや腐朽(ふきゅう)の原因になってしまいます。ここでは、「縁切り」についてご紹介します。
新築時の平板スレート屋根の屋根材(スレート)の写真です。平板スレート屋根は、新築時には屋根材の上下重なり部分に4mmほどの隙間があります。これは、雨水の排出、屋根材裏面の通気性を確保するための隙間です。雨水は、屋根材の上下重なり部分の隙間を通って排出されます。
平板スレート屋根は、新築後7年~10年ほどで、経年劣化を防ぐための塗装改修を行います。塗装はローラーなどで行う場合が多いのですが、その際、屋根材の上下の重なり部分の隙間を塗料の膜(塗膜)で塞いでしまうことがあります。
隙間が塞がると、屋根材の縦目地部から浸入した雨水が上下重なり部分から排水できなくなり、屋根材裏面に水分が溜まってしまいます。毛細管現象と呼ばれる現象により、屋根下地材(屋根の下にある木材部分)の腐朽(ふきゅう)や雨漏りの原因となってしまいます。
「縁切り」が不十分な場合、屋根材と屋根材が密着し、雨水や湿気を排出することができなくなります。この雨水は毛細管現象により屋根材の裏側に浸透し、下地材の腐朽(ふきゅう)や雨漏りなどの原因になります。
「縁切り」によく使われる工具はカッターと皮スキです。カッターでは塗膜に刃が入りにくく、作業効率が悪いため、皮スキを挿して塗膜を剥がすのが主流となっています。皮スキでの作業はかなりの力を入れて屋根材を持ち上げるため、屋根材が破損してしまう場合があります。
塗装完了後に再び屋根に上っての作業となるため、足跡が残ったり、小口部分(屋根材の端の部分)が破損する原因にもなりかねません。
一般的な平板スレート屋根の場合で、2人がかりで1日作業になります。
塗装完了後の翌日の作業では、屋根材裏面に入り込んだ塗料が完全に乾いていない場合が多いため、せっかく作業しても、後日、再び重なり部分が密着してしまうことがあります。